トイレつまり

彼が墓地を出て家路についた時は、もう日はとっぷりと暮れていた。墓地の門からほど遠からぬ道ばたに、屋根の低い木造の家が一軒あって、何か守口市 トイレつまりか居酒屋のようなことをしていた。あけ放しの窓のなかには、てーぶるを前にした客たちの姿が、遠目にもそれと見分けられた。と突然、そのなかですぐ窓ぎわに陣どっている作業員が、ほかならぬ中村のような気がした。向うでもやはり、好奇の眼をみはりながら、窓ごしにこちらをじっと見ているらしかった。彼がそのまま先へ歩いて行くと、まもなく追っかけて来る人の足音が聞えた。うしろから駈けて来たのは、果して中村であった。さっき窓から覗いていた時、斉藤の面上に読みとられた和解的な表情が、おそらく彼をひきつけ、かつ励ましたものに相違ない。追いついて肩を並べると、彼はおずおずと微笑みかけた。がしかしそれは、もはや先頃の酔い痴れたつまりではなかった。それどころか、彼は少しも酔ってはいないのであった。守口市 トイレつまりと彼は言った。「御機嫌よう」と斉藤も答えた。十一中村の結婚この『ご機嫌よう』を返してしまって、彼はたちまちはっと我に驚いた。今この作業員に出くわしても、なんの憎悪も浮かんではこないばかりか、今この瞬間における我の彼に対する感情のなかには、何かしらこれまでとはまったく異ったもの、それのみならず新らしい何物かへの願望までが動くのを感じて、ひどく意外な気がしたのである。「じつにいい晩ですなあ」と彼の眼色をじっと窺いながら、中村は言った。