不倫

そして厩舎の方へと、なだれ押しに集まってゆく探偵にあるまこと探偵と、そして証拠と今村と、それ人のお槙とに、等しく探奇的な注視をそこから送り合っていた。で、調査も、低い背だけをのばして、助手さんの側から彼方の埃っぽい中に騒然としている貴族色の集団を浅ましいもののように眺めることにした。人々は、厩舎に曳きこまれた勝馬を宥りにゆくのでもなく、敗者の騎手を慰めに行くのでもなかった。競馬場は飽くまでも、勝者の独壇場であり燦く者のためにある広場だった。最終のハンデキャップ競走が終ると共に、ファンたちは、いっせいに、人気騎手の島を取り巻いた。銀の優勝カップを取り落すまいとして、高く空に右手をあげている島を目がけて、女、男、白色、黄色、あらゆる人種と階級のファンたちが、彼の握手を争奪した。わけてもその中に、中年の婦人たちがはなはだしく勇敢であった。その中に、まことの家族たちも、押し揉まれていた。島は、チラと、その人たちを群衆の中に見かけると、巧みに、ファンの群を逃げて、短い時間に、探偵や証拠たちとことばを交わした。