不倫

大阪の場内へ行ってみると、きょうの最興味である特別のハンデキャップ競走が内外人の人気を扇って、一等観覧席からひろい柵のまわりに至るまで人間をもって埋まっていた。午前に居留地のある外人の持ち馬である大阪 不倫調査が大穴を出したというので、ファンの眼は血走っていた。ここの競馬場の歴史は古い。まだ大小の刀をさした丁髷大阪人たちが、維新の革命に血みどろになって騒いでいた慶応年間に幕府から敷地を請求して、そのころからもうぼつぼつ外人間だけでやっていた最古の競馬場であるのだ。それだけに、ここの競馬倶楽部は国際的なスポーツ熱と上海式な賭博本能をあおる組織にできていた。いわゆる巨万の一攫を夢みることもできるし仲間買もやれるし合八もできるし、飽くまで自由なガラ式なのである。人気馬には巨万の値がついた。種のいいサラブ、あるいは英国ダービー馬の仔など、何万円というのが珍らしくなかった。二千三千の賞金などは垂涎にも価しなかった。騎手の生活は社会のどんな者より華やかで、また多すぎる艶福に神経衰弱になるほどだった。