探偵

その晩、拝殿の裏に寝ころんでから間もなく、彼はすぐ下のベンチに不思議な動物を見てしまった。うとうととしかけると、どこから来たのか二個の動物が、夜更けのベンチに憩って、手も足も顔もどこにあるのか分らないようになって、いつまでも動かずにあるのだった。……調査はこの時ほどふしぎな感に衝たれたことはない。彼はまじまじと闇を見つめて寝られなかった。やがてそれが人間であること、男女のふたりであったことが分ってからよけいに胸がときめいた。二人はベンチを離れると、すぐに他人のようになってべつべつに別れて行った。彼は、ぼんやりと助手さんの唇を思いうかべた。——そして朝、眼がさめてまでゆうべの悪夢が後頭部にこびりついて彼の軽快を削いだ。陽がたかくなると、全市の空に、大阪競馬の花火が晴々しい爆音をひろげた。町の人々はすべて競馬場へ向っているように浮気には見えた。ポケットの百円|紙幣も海軍ナイフも、きのう探偵 大阪市から少年治監に送られるまえに刑事に取り上げを食っていたので、彼の淋しく探る指先には、何もふれるものがなかった。