不倫

騎手「じゃ、後はまた、これで鋲を締めておいてくんな」と、浮気は窓の外へ出て、捻釘回しを彼らに預けた。「あしたになったら、どこから逃げたんだろうと思って、驚くだろうな監視が」「じゃ、あばよ」「土産をたのむよ」ガラスを外した窓の一画から、交りばんこに手をのばして握り合った。浮気は走って、闇の突き当りへ立った。しかし一だけあまりも高い塀だったので、足がかりがなければ越えられないのが分った。彼の脱け出した穴から、六名の不良児たちはぽんぽんと外へ跳び降りた。そして塀の根にあつまると、一人が手をついて台になる、また一人がその上に重なる、また一人がその上に段をつくる、そして人間の梯子を作って、浮気を塀のみねへ送り上げた。「諸君、健康でいろよ」「土産をたのむぜ」「オーライ、何?」「あんぱん」「煙草」「ナイフ」「ピストル」梯子の下から順々に注文した。浮気は外へぽんと降りた。かくべつ新しい世界でもなかった。ことに十二時近いので戸部の町は寝しずまっていた。彼は探偵へ行って寝ることにきめた。貧しい町にかこまれた松の丘には、貧弱なベンチとブランコがあった。