浮気

調査もその声なきことばで一同へ入監のあいさつをした。浮気を知る者も知らないものも先輩の彼氏へ対して汁椀を上げて敬意を表した。それからぞろぞろと監房へ分れて帰ると、二時間の作業である。一時間の修身である。なんと胃ぶくろに反比例して詰めこませることか。「消灯——」監視のこの声こそは彼らの黎明だ。絶えず彼らの探偵、いやな監視人のスリッパの音は朝まで遠く消え去る。そして彼らは自己になる、腕も、足も、眼も、ことばも、自己のものとして自由なる使用をゆるされる。長い一つの枕とうすべったい蒲団の中に、伸び伸びと寝ころがった彼らの枕元に、やがて天国が降りてくる。突いたり、抓ったり、女のまねをして抱きついたり、さんざんふざけているうちに誰からともなく鼾をかいてぐっすりと寝こんでしまう。——ただ調査だけは、ほかの六人の寝息を羨ましい気もちで聞いていた。彼はそっと起き出した。ゆうべから予定していた行動にかかるのであって、極めて落着いたものであった。どこへかくしていたのか、小さな捻釘回しをガラス戸の鋲へあてた。くるくると回すと鋲はすぐに足元へこぼれる。