探偵

「食事」と、冷たい声を投げながら、監視は、各室の錠をひらいて、五名、あるいは七名、あるいは十名ずつの食欲そのものに柔順な不良児たちを引率して、ひろい板場の食卓にあつまった。薪の煤で真ッくろに薫っている天井から、笠の焦げているのや、ホヤにまことサーチあるランプが、卓の上に添うて七、八個ほど吊りさげてある。真摯な感化事業家をもって生涯をゆだねているような老外人の夫妻は卓頭に立って黙祷をする。不良児たちもその間だけは、しおらしく口のうちで祈祷のことばを呟いている振りをするのだった。老外人の夫妻は、彼らと同じように、割麦の大部分な大阪米を食べ、鯨油をたらしたまずい野菜汁をすすり、沢庵漬をも噛んだ。しかし不良児たちは、監長のそういう行いに何らの感激をもうけた例しはない。彼らはこの食事室の会合によって胃ぶくろを満たしながら、その箸の先と、眼と眼とのうごきかたで、意中にあるすべてのことを仲間の者と語りつくした。——たとえば、きょうは我らの調査が入監って来て大いに愉快だということも、また、こん夜、誰か夜半に事務室へしのびこんで巻煙草を各室へ一本ずつ配分する英雄はないかという信号も、また、K監視はすこしこのごろ生意気だから何かで失策らせてやろうじゃないかという計画も——敢えてことばを要せずに通じるのである。